「のろいの温泉」
その温泉は人里離れた山奥の更に奥深くに進んだところにひっそりと存在します。
泉質もよく、とても静かなその温泉。
場所が場所なら人で溢れかえっていてもおかしくない。
しかしこの温泉、滅多に人が訪ねることはありません。
そんなある日、温泉の噂を聞きつけてやってきた3人組の若者。
その内1人がこうこうつぶやきました。
「こんな山奥にひっそりとあるからみんな寄りつかないのかなぁ。さすがにちょっと遠いもんな」
また1人が「でもこんな良いところを独占できるなんて嬉しい限りだ」
最後の1人が言いました。
「でもまぁこんな山奥だから暗くなるのも早いぞ。さっさと温泉に入ってしまおう」
そうこうしていると温泉の方から1人の人が歩いてきます。
ただその人、ちょっと様子がおかしい。
全身ずぶ濡れで小刻みに震えているのです。
そしてどうやらぶつぶつと何か言っているようです。
3人が耳を澄ましてみると
「のろいの温泉、、、のろい、、、のろい」
と繰り返しているじゃありませんか。
3人は青ざめましたがここまで来たからには引き返す訳にもいきません。
3人は何かの聞き間違いだと自分に言い聞かせ温泉にたどり着きます。
「なんだったんだろな、、、さっきの」
「きっと聞き間違いだよ。のろいの温泉なんてあるわけがない」
「そうだよな、体も冷え切ってしまったし温泉に入ろう!」
温泉の呪いを恐れながらも3人は飛び込むように入浴します。
「・・・ぬるっ!!」
そう、先ほどの人、のろいの温泉ではなくぬるいの温泉と言いながら震えていたのです!!
3人はすっかり風邪をひいてしまいました。
以上「のろいの温泉」でした。