未来から来た人

 

それは今朝のこと

初夏を思わせる清々しい空気の中、今日も私は会社に向かっていた。

 

こんな天気の良い日は気が重いはずの通勤も心なしか気持ちが踊るな

 

そんな事を思いながらいつもより少しだけ上機嫌に歩を進める。

 

 

ボチャッ

 

突然、繰り返される毎日を打破する衝撃音

 

驚いた。

私はその圧倒的衝撃に恐怖を覚えた。

 

恐る恐る辺りを見回す私。

その目に飛び込んできたのは

特大サイズの鳥の糞

 

私の5m先に恐ろしいサイズの鳥の糞が落下したのである。

 

あんな物が直撃した日には

・家に引き返して着替えを行う

・着ていた服の処理

・シャワーを浴びる

と時間のロスは避けられない

いや、時間のロスなどまだよい。

 

心の傷が深すぎて家から出られなくなるだろう

場合に寄っては身体にも傷ができるかもしれない。

 

私はゾッとした。

そしてとても驚いた。

顔が真っ青になった。

 

とこれだけでも十分に驚いたのだが、話はここで終わらない。

 

その場面、登場人物は私だけではないのだ。

私の5m先にはあと2人通行人がいたのだ。

 

仲むつまじげに手を繋ぐカップル。

 

懸命な方ならもうお気づきだろう

 

私の5m先

 

つまり

 

鳥の糞の落下地点。

 

正確には落下地点の

すぐ横!

 

恐らくタイミング的に奇跡的な回避!

 

それなのに

そのカップル

何事もなかったかのように去って行った。

鳥の糞など落ちて来ていないかのように

 

5m後ろの私が狼狽して天を見上げたのにだ!

 

私は思考を急加速させた。

 

彼らは何故あんなに恐ろしい目にあったのに平然としているのだ

 

何かの武道の達人なのか?

気配で落ちてくることを察知していたのか?

すんでの所で見切っていたから避ける動作すら気がつかせなかったのか?

 

にしても

にしてもだ!

 

落下した物体くらい見るだろう

すっごい音してたもん。

 

 

これはもう

彼ら、鳥の糞が落ちてくることを知っていたに違いない

そう、彼らは未来が見えていたのだ。

 

未来からやって来た人なのだ。

 

そうでもしないとあんなに完璧にかつ冷静に鳥の糞を避けられるはずがない!

 

未来からやって来た

もしくは近い未来が見えているんだ!

 

私は納得して歩を進めることにした。

 

数秒後、

カップルの1人

歩道の縁石に躓いた。

 

ごく近い未来は見えないらしい。

 

そしてこの話のクライマックス

 

もっとも驚いた瞬間がここからやって来る

 

なんと

 

私も同じところで躓いた。

 

私なんて近い過去すら認識できていなかったのだ。

顔が真っ赤になった。

 

 

世の中には本当に様々な人が存在する

たった半径5mの中に

未来が見える人と過去が見えない人が存在するように

 

この世の中は彩り豊か

多種多様

 

そう考えれば

世界がつまらないなんてことはあり得ない。

気がついていないだけなんだ。

 

世界は全てに満ちている

スポンサーリンク