神さまの手抜かり

7月を迎え

夏真っ盛りな今日この頃

何も無くても楽しい

そんな夏の昼下がり

軽い足取りでコンビニに行って帰ってきた私の視界に突如黒い塊が飛び込んできた

 

何事かと意識をそこに集中すると

その黒い塊は

名前もよくわからない虫

昆虫

 

「こちらに飛んでくる!」

勢いよく自らに突っ込んでくる物体に当然危機感が芽生える

一瞬身構えたが

急転回したその昆虫は私とは反対の方向へ

 

危機は免れた

ほっと胸をなで下ろしたその瞬間

 

ガンッ

 

豪快な炸裂音

 

あんなに小さい体のどこからそんな音が鳴ったのかというほどの轟音と共に

地面に真っ逆さま

 

激突してしまったんだね

ガラスに

 

見えないもんね

ガラス

 

私だって目の前に透明な壁があったら

勢いよくぶつかってぶっ倒れていると思うもの

 

人間のような大きな脳を持っている生物でも恐らく避けられないその悲劇に

昆虫が抗えるわけもない

 

 

地面に落下した昆虫は

仰向けになって足掻いている

 

足掻く:自由になろうとしてやたらと手足を動かす。もがく。

 

「はぁ~なるほどこれが足掻くと言うことか~文字通りだなぁ」

なんて思って見ていると

少しずつ私の心の中に仏心が芽生える

 

「これは助けてやらねばならんのでは、、、、」

 

彼は自分で起き上がることができなくて必死に足掻いているのではないだろうか

このままではエネルギーを使い果たして天に召されてしまう

 

小さい体で生きようと必死に頑張っているその姿に

私の昆虫より小さいサイズの善の心が動き出す

 

恐る恐る近づく私

 

だんだん鮮明になるその姿

 

まもなく手が届く

そんな距離まで近づいたその瞬間!

 

私の善の心を簡単に凌駕するものが!

それは本能

 

 

人間それはとても知能が発達した生物

火を使うことで劇的に栄養効率が上がったその生命体はみるみるうちに様々な知恵を生み出した

(ここから先は話が長くなる&シンプルに面倒くさいので割愛させてもらおう)

 

 

 

知能が発達したからと言って

生命を守るための判断をいちいち考えていては間に合わない

そこで必要なのが本能

 

頭で考えなくとも感情という形で危機を避けてくれるこの便利システム

そしてその情報を考えて処理しなくても感情という形でシンプルかつ迅速に処理してくれる

 

 

今回はそれが

これを食べたらお腹を壊す→お腹を壊すと運動能力が下がる→エサが獲れなくなる

という危機を察知してくれたのである

 

 

いや、別に食べないでしょ昆虫

 

そう思いますか?

 

 

 

うん

 

 

 

私もそう思う

 

 

 

問題は食べられるか食べられないかじゃないんだ

 

 

 

問題は本能の現れ方

 

 

そう

 

 

 

気持ち悪かったの

 

 

 

仰向けで足掻くその姿が

 

 

なんというかその、、、、、

 

 

 

気持ち悪かったの、、、、、

 

 

 

いやいやいや生きようと必死なのに気持ち悪いとか酷いじゃない

理性がそう自分に言い聞かせるんだけれど

 

 

本能には勝てない

 

 

気持ち悪い

 

 

あぁ、、本能が食べちゃだめだよ~~~

めっ!!

って言ってる

 

 

これはダメだ

 

理性は本能には敵わない

 

 

 

「君が必死に生きようと足掻いているのが本能ならば私のこの気持ち悪さも本能だわかってくれるよね」

君もきっと

「本能じゃ仕方ないよね。そもそも今回は僕の不注意でこうなってしまったわけで君には一切過失がないからね。今回はお気持ちだけ受け取っておくよありがとう」

なんて言っているよね

 

 

見なかったことにしよう

いや、あれも自然のあるべき姿だ

きっとあの昆虫を生命の糧にして生き延びる鳥さんがいるはずだ

私のちっぽけな善意で鳥さんの生命に危機を与えては過失をもった加害者になってしまうではないか

立ち去ろう

そうするべだ

 

 

 

 

 

、、、

、、、、

、、、、、

 

 

 

 

昆虫の裏側

あれはどうしてあんなにこうなんていうか、、、、、

 

 

 

気持ち悪いの

 

 

 

表側だけこだわって裏側適当に作っちゃったみたいなあの作り

どうにかならんの

 

裏側も表側みたいに隠そうよ

 

本能なんて複雑かつ高度なシステムを搭載させるなら

 

そこ、手抜きしないでよ神さま

 

 

 

そんな風に悪態をつきながらも

 

ばつの悪さに押されて

 

 

落ちていた枝を使って無事に昆虫の救出を済ませて

 

今に至る

 

 

そんな真夏の出来事

 

 

 

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